「免疫力を強化する方法はあります。免疫には、昔から知られている獲得免疫と、近年研究が急激に進んでいる自然免疫があります。ワクチンで獲得免疫系を強化する方法は、昔から知られていますが、がんに対しては十分な効果がありません。」

「自然免疫という言葉は聞いたことがないのですが」と町会長。

「細菌などを食べてしまう貪食細胞と呼ばれるものが自然免疫に入ります。抗原抗体反応に関係なく、生体内の異物を食べてしまいます。」

「マクロファージが自然免疫ということですか」と町会長。

「昔は、貪食細胞と言うとマクロファージのことでしたが、現在は、マクロファージの他に好中球や樹状細胞を指すことがあります。」

「貪食細胞はがん細胞も食べてしまうのですか」と町会長。

「おっしゃる通りです。貪食細胞はがん細胞を食べた後、胸腺で分化した未熟なT細胞にリンパ節内で抗原を提示して活性化させます。活性化したT細胞は血液を通ってがん細胞に行き、攻撃します。」

「完璧な防御システムですね」と町会長。

「さらにナチュラルキラー細胞というのがあって、常に体内を循環しています。T細胞と違い、がん細胞やウイルスに感染した細胞を発見すると抗原には関係なく殺します。」

「本当に完璧な防御システムですね。ここまで完璧なのに、なぜ、がんになるのでしょうか」と町会長。

「先ほど話したように、ブラックバーンは『こうした免疫細胞の中には、体のあちこちに設置された監視カメラのような働きをするものもある。免疫細胞が老化すれば、監視カメラのレンズが曇り、異物であるはずのがん細胞を見落とす危険性がある。そして、ふつうならすぐに出動するはずの免疫細胞のチームが、行動を起こしにくくなる。テロメアが弱まった結果、免疫による体の防衛システムは、がんとの戦いに勝てなくなるのだ』と言っています。」

「免疫細胞というのは、貪食細胞やナチュラルキラー細胞のことなのですね」と町会長。

「おっしゃる通りです。」

「すると、『体のあちこちに設置された監視カメラのような働きをするもの』と言うのは、ナチュラルキラー細胞のことですね。そして、『すぐに出動するはずの免疫細胞のチーム』というのは、貪食細胞やT細胞のことなのですね」と町会長。

「おっしゃる通りです。ここまで完璧な防御システムがあるので、人間は、普通、若いときにはがんにならないのです。」

「ブラックバーンが本当に言おうとしているのは、『年を取ると免疫細胞のテロメアが弱って、がんとの戦いに勝てなくなる』ということだったのですね」と町会長。

「おっしゃる通りです。」

「それでは、年を取った人の免疫細胞のテロメアをがんとの戦いに勝てるところまで回復させる方法はないということなのですか」と町会長。

2019/10/17